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「そうだろうなってなに落ち着いてんのっ。早く連れて行かなきゃ」
幸宏の落ち着き払った声に思わずあわててしまう。
「そう慌てなくても大丈夫だぞ。俺には動物病院に知り合いがいるからそこに頼めばすぐに診察ができるはずだからな」
「そんな知り合いがいるの?」
「お前の知っている奴だぞ」
そう言うと幸宏はニヤリと口元を歪める。
「僕も知っている? そんな人いたかなぁ」
「ああ、大地、お前……まさか、忘れたのか。そこまでバカだとはな」
「なっ……」
失礼なっ。漫画の読んだところを何ヶ月経っても覚えてられる僕にバカだとぅ。
「だ、大地。大丈夫よ。幸宏が大地のことを見捨ててもわたしは見捨てないから」
「優奈もですぅ」
なぎさと優奈ちゃんはフォローのつもりか温かい目で見ている。
「あ、ありがとう……」
な、なんだろう。僕をバカにしない味方がいてくれて嬉しいはずなのに泣きたくなるのはなぜだろう……。
「そんなことは置いといて」
「置いてかれた!」
「電話してから病院に向かうぞ」
そう言って幸宏はズボンの中にある携帯を取りだして電話しだした。
「……あ、さららか? ちょっと診察してもらいたい子猫を拾ったんだが診てくれないか。なに、今日は休診日だから無理だと。死にそうなネコを見捨てる気じゃないだろうな? ……わかってくれるのか。じゃ、連れてくるからな」
幸宏は言いたいことをいって電話を切った。
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