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僕のベッドにキャリーバックに入れたままの子猫を置いて、子猫の名前を考えていると玄関から呼び鈴の音が聞こえてきた。
誰だろう?
「大ちゃん、幸宏君が訪ねて来たわよっ」
と母さんに呼ばれた。
幸宏が家にきた? さっき別れたばかりなのに何の用なのかな。
「わかったっ、今いくよ」
返事を返して玄関に向かうと、右腕に大きな紙袋を抱えて左手には上半分が白く透明で下半分は水色のケースを持っている幸宏がいた。
紙袋の中身は見えないけど、ケースの大きさは幸宏の膝から下のかかとぐらいはあると思う。
「幸宏、そんなに荷物を抱えてどうしたの」
目を丸くして不機嫌な顔の幸宏に聞くと「その前にこれを持ってくれ」と言って右腕に持っている紙袋を僕に押し付けた。
「で、なんで家にきたの? さっき別れたばかりなのにさ」
紙袋を持ちながら同じ質問をしてみる。
幸宏は空いた手で頭をポリポリと掻いた。
「俺が大地の家にきたのは、お前にこの荷物を渡すためだ」
そう言って幸宏はケースを示すように軽く持ち上げた。
「ふーん。この袋と幸宏が持っているケースを僕に渡すためにねぇ……でも、なんで幸宏が持ってきたの?」
「お前等と別れた後にさららから電話が来たんだよ。この荷物が猫を世話するのに必要だからみんなの家を知っている俺に運ぶのを手伝ってくれとな」
「さららさんから?」
「ああ、しかも代金は俺がさららの病院を手伝ってくれたら払わなくていいとのオマケ付きでな」
「まあ、頑張って」
「ふん、お前に言われなくてもそのつもりだ。最初の仕事はここでの設置作業だ。上がるぞ」
幸宏は僕の部屋がある二階に向かって階段を駆け上がった。
僕も二階に向かった。
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