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「うん。いいよ」
考えるまでもなくオーケーに決まっている。
妹がいない僕にしたら優奈ちゃんは妹のようなものだからね。
「わぁいっ、うれしいですぅ」
優奈ちゃんはピョンピョンとテンションの高い子供みたいに飛び跳ねた。
子犬を見ているみたいでかわいいなぁ。
「どうしたんですかぁ?」
優奈ちゃんは不思議そうに小首を傾げる。
「………はっ」
いかんいかん。優奈ちゃんのあまりのかわいさににやけるところだった。
優奈ちゃんの前では頼りになる先輩を崩したくない。
「な、なんでもないよ。それじゃあ行こうか」
「?……はいっ」
優奈ちゃんは疑うことの知らないつぶらな瞳で元気よく答えた。
僕と優奈ちゃんは下駄箱に向かって歩き出した。
――と
「帰らない? ……あれ?」
なぎさはやっと言いたいことが言えたらしい。
なんで一緒に帰らないかと聞くだけでそんなに呂律(ろれつ)が回らなくなるんだろう? 普段はハキハキと喋るのに……へんなの。
「なぎさ、ぼーっとしてないで帰るよ」
「あ、うん」
僕と優奈ちゃんとなぎさの三人で下駄箱に向かって歩いていると、あることに気づいて歩みを止める。僕に合わせるように二人も歩みをとめた。
そのまま顔をなぎさに向ける。
「そういえばさ」
「なに?」
なぎさは上目遣いで僕を見上げる。
僕はなぎさが持っている鍵を指差した。
「なぎさの持っている鍵は職員室に返さなくていいの?」
「え……ああっ忘れてた!」
やっぱり忘れていたか。なぎさはマネージャーのわりに大事なことを忘れやすいから時々指摘しないと大変なことになるし気づいてよかった。
ナイス僕。
「大地、優奈ちゃん鍵を返しに行くから悪いけど下駄箱で待ってて」
「いいよ」
「はいです!」
なぎさは慌てて職員室に向かっていった。
そんなに慌てることないのになぁ。
「今日のなぎさはなんか変だよね。顔が赤くなったり呂律が回らなかったりと」
「そうですね。どうしたんでしょうか?」
僕は腕を組んで考えてみる。
……全くわからない。
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