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「た、ため息をついてどうしたのよ?」
「いや、なぎさの僕に対する気持ちを知ってしまって…ね」
「わ、わたしの気持ちが分かったの?」
なぎさは顔を耳まで赤く染めてうつむいた。体はモジモジとして指で髪をくるくるといじくりだす。
「うん、なぎさの心の狭さがね」
「…え、今なんて?」
「なんでもないよ。…………はぁ」
「?え?…え?……え?」
なぎさはうつむいていて聞いていなかったのか訳が分からないという顔をしていた。
「そんな事は置いといて…」
「そ、そんなことって…」
なぎさはなぜかガーンと衝撃を受けたかのようにふらふらしていた。
?へんなの。まあ、今日のなぎさはなんか変だから気にしないけど。
「優奈ちゃんとなぎさは傘持ってきているのかな?」
僕は優奈ちゃんとなぎさに尋ねてみる。
「わたしは持ってきてますよぅ」
そう言って優奈ちゃんは傘立てから傘を取り出して僕に見せた。
優奈ちゃんの傘は可愛らしいピンク色のいかにも優奈ちゃんらしい傘だった。握るところには「ゆ~な」とキラキラと光る名前が書いてある。
「わたしも持ってきたわよ」
なぎさはカバンの中から無地の折りたたみ傘を取り出した。
優奈ちゃんとは対照的に「なぎさ」と黒のボールペンで書いてるだけだ。
なんか傘で性格が表れているなぁ。
「でも困ったな、どうやって帰ろう」
「だ、だ、大地それならわたしの傘に――」
ここは少し恥ずかしいけど仕方ない。
「優奈ちゃんの傘に入らせてくれないかな?」
「入らない?って、え……」
「いいですよぅ」
僕の頼みを優奈ちゃんはにっこりと笑顔を浮かべて頷いてくれた。
「ありがとう」
お礼を言うと優奈ちゃんは傘を開いてくれた。
僕がその中に入ると優奈ちゃんは外に歩き出した。
やっぱり持つべきものは気のきいているかわいい後輩だね。
僕は優奈ちゃんの歩幅に合わせるように歩いた。
「先輩、聞いて下さいよ」
「なに」
「昨日、お姉ちゃんと買い物に行ったときにですね~」
「うん」
「大地、ちょっと。待ってよ」
優奈ちゃんとしゃべっている僕の後方で呼んでいる声がするけど気のせいかな?
ま、いいか。
後ろではガックリと肩を落としたなぎさとその肩をポンと叩く幸宏がいた。
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