54人が本棚に入れています
本棚に追加
神社の前は緩やかな勾配の上り坂になっている。
たいして距離は無いとはいえ、階段の上り坂は年寄りには堪えるだろう。
人の事は言えんが。
心配になり、堪らずわしも追い掛けた。
言わんこっちゃ無い、一気に登ろうとするから息が切れておるでわないか。
わしの存在に気付き、
「あら、猫ちゃん」
「心配して追い掛けてきてくれたの?」
「ふふふっ、ご免なさいね、心配掛けちゃって」
「もう少しだから頑張るわね」
そう言うと、再び階段を登り始めた。
若者なら2分とかからんであろう坂を、倍以上の時間を掛けて登った。
足を止め呼吸を整える。
顔を上げ、懐かしそうに境内を見回すと、一本の木に視線を止めた。
枝振りが見事な桜の木だった。
最初のコメントを投稿しよう!