思い出

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神社の前は緩やかな勾配の上り坂になっている。 たいして距離は無いとはいえ、階段の上り坂は年寄りには堪えるだろう。   人の事は言えんが。 心配になり、堪らずわしも追い掛けた。   言わんこっちゃ無い、一気に登ろうとするから息が切れておるでわないか。 わしの存在に気付き、   「あら、猫ちゃん」 「心配して追い掛けてきてくれたの?」 「ふふふっ、ご免なさいね、心配掛けちゃって」 「もう少しだから頑張るわね」   そう言うと、再び階段を登り始めた。 若者なら2分とかからんであろう坂を、倍以上の時間を掛けて登った。   足を止め呼吸を整える。 顔を上げ、懐かしそうに境内を見回すと、一本の木に視線を止めた。   枝振りが見事な桜の木だった。
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