54人が本棚に入れています
本棚に追加
時期が過ぎていた為、花を見る事は出来なかったが、外灯に照らされた緑の葉が鮮やかだった。
老婆は桜に向かい歩き出していた。
幼い頃の思い出でも蘇っているのだろう。
目を細め懐かしそうに、ゆっくりと桜に触れた。
優しく木の幹を擦ると、持ってきたバッグからスコップを取出し、木の根元の土を掘り出した。
そして、土を堀りながらわしに、
「ただ闇雲に掘っている訳じゃないのよ」
「目印があるの」
そう言うと、桜の木の根を指差し、
「此処に木の根っこが盛り上がっている所があるでしょ」
見ると、人間の拳程の石が挟まっている。
「きっと、木が成長する時に巻き込まれてしまったのね」
「子供の頃は、この石を目印にして、お互いの宝物を隠していたの」
最初のコメントを投稿しよう!