思い出

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手紙を読み終えた老婆の眼からは、留めどなく涙が溢れ出ておった。   「…ご免なさい…、ご免なさい、あの時直ぐにでも、想いに応えていれば…」   そこまで言うと、後は言葉に成らなかった。   『…いいんだよ…』   何処からか聞こえる声に顔を上げると、白髪頭の老人が立っていた。 老人はボンヤリと青白く光り、一目でこの世の者ではない事が分かった。   「お兄ちゃん?お兄ちゃんなの!?」   驚きたずねる老婆に、老人はただ黙って頷いた。   「で…でも、どうして!?どうして年を取っているの!?私は戦争で亡くなったって…」   老婆がそう言うと、老人は静かに話し始めた。   『命からがら、何とか帰ってくる事が出来たんだ』
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