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『何時までもお元気で』
そう言うと、ニッコリと微笑んで光の中へと消えていった。
老人を見送った後、わしら二人の周りは元の夕闇に戻っていた。
「夢を見ていたみたい…」
そう呟く老婆のもとに、ひらひらと舞い降ちてくるものがあった。
それは、一枚の桜の花弁じゃった。
桜の木は緑の葉が生い茂っている。
時期も過ぎ、桜の花などは何処にも在るはずは無いのに…。
花弁を手にすると、
「…ありがとう…」
老婆はそう一言だけ言うと、一筋の涙を流した…。
暑い夏の日の出来事じゃった。
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