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あれは、食後の日課になっとる夕涼みをしに、繁華街の少し先にある公園で休んでいるときじゃった。
「ジャリ、ジャリ…」
土を踏みしめる音と、わしが寝ているベンチに近づく気配で目を開けた。
足音はそのままベンチまでやってきた。
上を見上げると、白髪頭だがいい家の人間なのか、どことなく品のある老婆が座っておった。
老婆の上品な雰囲気は、賑やかなこの街とは、何処か不似合いな感じがした。
老婆は、穏やかな笑みを浮かべわしを見ると、わしの頭を二度三度撫で、静かに話し始めた。
「ねぇ、猫ちゃん」
「あなた、この街は長いの?」
「私も若い頃はここら辺に住んでいたのよ」
「もっとも、あの頃とはすっかり様変わりしてしまったけれど…」
そう言うと、公園の先にある神社を見上げ、遠い眼をした。
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