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少女は闇の中をさまよっていた。
薄紫の髪が闇に溶け込んでいる。
ここが何処なのか分からず途方に暮れるしかなかった。
体が重く疲労も限界に近づいている。
『…‥お父様』
心の中で呟く声は、何処にも届かない。
歩き疲れた少女は、ついにその場に座り込み、闇の空間を見上げた。
すると、前方から明るく輝く何かが近づいて来る。
その何かが少女の前まで来ると、クルクルと回りながら停止し、点滅した後、遠ざかって行く。
少女は手を伸ばして触れようとするが届かない。
この闇の中で唯一の光は、少女との距離を一定に保ち停止する。
『ついて来いって事?』
重く疲れた体を動かし、不思議な光を追いかけようと立ち上がった。
何処までも続く闇の中を歩き、一つの扉の前にたどり着く。
不思議な光は、その扉をすり抜けるように消えて行った。
少女は扉をゆっくりと開けると、そこは懐かしい景色が広がっている。
『帰って来たんだ…‥』
扉から外に出た少女は安堵しながら歩き始めた。
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