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……かなりの間、気を失っていたらしい。
ふと気がつくと、私は聖池のほとりに、不自然な姿勢で立っていた。
上の両腕を空に向けて伸ばし、軽く足を開き――足には、体を固定するためか、何かが巻き付いている。
それにしても、後ろの顔と下の腕の付け根が焼けるように痛む……あの巨大な鰐口に傷つけられたに違いない。
そのせいか、背面の目はどうしても開かなかった。戦場がどうなったのか、仕方なく前面の目で見ようと首を動かしたら、猛烈な激痛が走った。
「こら、動くな」
不意に背後で声がして、私は飛び上がりそうになった。実際には足を束縛されていて、踵も上がらなかったが。
聞き覚えのある声に振り返ろうとして、また激痛をくらうはめになる。
「手当てが済むまでおとなしくしていろ」
その時になって気づいたが、私の胴を支えていたのは二対の腕だった。おそらく、私の上の腕を持ち上げているのはもう一対の腕――
「あ、しゅ、ら」
声を絞り出すのでさえ、いちいち痛みが走る。
「愛染……約束どおり、強くなったな」
背後に立つ者の姿は見えない。何か言おうとしたら、今度は口を塞がれた。
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