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普通なら聞こえない程、小さな呟き。
でも僕の耳には届いたんだ。
「お、俺を、馬鹿にしやがって……。お、お前も、あ、あの、ガキも。あ、あいつも、赤く、染めて、や、る」
あいつって?
ああ、タクミの事だ。
大事な友達。
僕みたいに、痛い目に合わせちゃいけない。
教えたげないと――!
僕は、薄れていく意識で、タクミを守る事だけを考えていた。
「思い出したみたいですね」
ああ、僕はもう死んでるんだ。
「そうです。たまたま私がここを通らなければ、カナメは道に迷って、自我さえ失っていたでしょう」
そうだ、僕はタクミに、あの男の人の事を教えようとここに居た。
でも僕は、だんだん考える事が出来なくなってきたんだ。
タクミとバイバイしたんだから、家に帰らなきゃって、それしか考えられなくなってた。
「だけどカナメはそれすら出来なくなり、同じ時間の中に囚われていました」
「私は偶然、鬼の臭いを嗅いだ。本来なら、私の仕事では無いのですが、乗り掛かった船ですからね。鬼退治をする為もあって、カナメの側に居たのです」
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