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僕はクロって名前の猫を飼っている。黒いからクロ。でも右の耳だけ真っ白なんだ。まるで、そこだけ色を塗り忘れたみたいだ。
そして、綺麗な金色の瞳をしている。
と言っても、つい一週間位前に拾ってきたから、飼ってると言うのは違うかな。
あ、クロも隣で『心外な』って顔しているよ。
『拾われたんじゃない』って言いたそうだ。
クロとは、下校途中にある空き地の入り口で出会ったんだ。
僕は小学三年生。
毎週水曜日は、下校時間が少し早い。小学校の先生達の会があるらしいよ。
そして、その日は朝から雨の予報だったんだけど、帰りのその時間は小雨で、傘はささなくて大丈夫だった。
それで友達とちゃんばらごっこしながら帰ってたんだ。
その友達と、いつも別れる曲がり角。そこを曲がって、少し行ったとこにある空き地で、
『にゃーご』
と、潰れたヒキガエルみたいな声の、猫の鳴き声が聞こえてきた。
僕が見ると、そこにクロがいたのさ。
微かに湿った黒い毛皮を艶やかに光らせて、金色の瞳が僕を見つめてる。
僕は魅入られたように、その場を動けなくなった。
そして、クロが『おいで』って顔で歩き出すから、その後ろを尾いて行ったんだ。
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