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その日。
私、神原 綾(かんばら あや)は焦っていた。
理由は……ナンパされたから。
放課後、特に部活に入っていない私は親友である蛍村 渚(ほたむら なぎさ)と現在通っている学校を出て、家路に着いていた。
その途中にあるこの街に昔からある馴染みの商店街で、渚が団子屋『三味堂』に寄ろうと提案してきたのだ。
まあ、そこまでは良いよ?
私だって甘味物は好きだし、親友の提案を却下するほど忙しいわけでもない。
それに『三味堂』の団子は値段も手頃で美味しいと、この街の人なら誰でも知ってるくらいだ。私だってあそこのみたらし団子が食べれるなら喜んで付き合う。
問題なのは『三味堂』まで後数mのところで何故だか2人してナンパされて、男が私に話し掛けたのを見計らい、一人『三味堂』へと行ってしまったことだ。
故に私はたった一人でナンパ男と戦う羽目になってしまったわけです。
「なぁ、ちょっとだけだし俺に付き合えよ~」
「い、いや、その、困ります」
見た感じ大学生ぐらいの年に見える人だ。金髪に染めて、ダボダボな灰色ジャージに、指輪やピアスやらつけている。ノリが軽そうな人だ。正直苦手なタイプ。
それにしても、ドラマとかで絡まれた人みたいにしか返せない自分が憎らしい。(だってナンパされたの初めてだよ!)
これでは当分逃げられそうに無い。
頼みの綱の親友のほうを見れば、こちらとは無関係とばかりに『三味堂』の店先のベンチでのんびり私が食べたかったみたらし団子を食っていた。(お、お前ちょっとうらやましいぞ!)
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