1.記憶を辿る…

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「お姉ちゃん、猫拾っちゃった」 そう言って私の部屋に当時小学2年の弟タケシがやって来た。 見ると、まだ目が開いていない茶トラの子猫がピーピーと鳴いている。 「どこにいたの?」 「公園」 うちはその3ヶ月前、飼い猫の小太郎が車に引かれて死んでしまうという悲しい事件があったばかりだった。まだその心の傷は癒えていない。 でもこんなに小さい子を見放す気にもならなかった。 「飼いたいの?」と弟に聞くと、弟は真剣な面持ちで「うん。」と言う。 当時私は高校1年生。 幼い弟の代弁をするか…という考えと思いきや、実は子猫の可愛さに既に負けていたのだ。
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