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「おいおい! いよいよ明日だぜ明日!!」
うきうきとそう言ったのは猿山だった。
「うん。そうだね猿山くん」
「あんさ、バナナはおやつに入るのかなぁ~? フフン、フフフフンッ」
隣に座る柊は、冷静な判断を下す。
「猿山くんなら、大丈夫だと思うよ」
「うんうん、そうかそうか……って! どーゆー意味だよそれぇえい!!」
「痛い! 痛いよ猿山くん! 僕は現実を言ったまでで」
「えぇい、大人しくしろ! 今からお前を“ぐりぐりの刑”に処す!」
くぬやろッ! くぬやろッ! と猿山が暴れているのは、一年三組の教室であった。
昼休みの、弁当の時間である。猿山と柊、そしてそれを困ったように見ている竜也がいた。
「ちょっとちょっと、何してんのよアンタたちッ」
と言って二人の仲裁に入ったのは、ショートヘアの元気娘、宮里理恵その人。
「理恵ちゃん!」
と、猿山が過剰に反応する。
「な、何よ……」
「バナナはおやつに入るんでしょうか?」
理恵は呆れて、言った。
「はぁ? アンタ何言っちゃってんの?」
「いやぁ、明日から始まる一年生最大の行事に、準備は必要じゃないですかぁ。グフ、グフフフフッ」
猿山ちょっと、いや、結構気持ち悪かった。
「智美! この馬鹿にもう一度明日の持ち物伝えといた方がいいよ~。ここままじゃ猿山、バックがお菓子でパンパンの状態で、学校に来るんじゃない?」
理恵が言って、同じ三組の教室で弁当を食べていた智美がこちらの方を振り向いた。
クラス委員である智美は、明日から始まるそれに、一番詳しい人物なのである。
「えっ、お菓子の量ですか?」
智美がそのグループに近付いてきて、興奮のあまり飛びかかろうとした猿山を、理恵が二秒でギッタギタにした後、智美はそう言った。
「ふぁい……」
これは猿山だ。
ぼこぼこにされて、上手く喋れないらしい。
自業自得である。
「え……っと、お菓子は自己責任となっているんですが……」
脅えながら、智美が言った。
その声は、猿山の目に希望をもたらした。
「でも、二泊三日ということを考えるなら、大体五百円くらいかなぁ、って谷上せん……」
「いぃやぁほぉぉおおおう!」
猿山が雄叫びをあげ。
智美は、きゃあ、と言って。
理恵が、
「うるさい!!」
と言って、猿山のみぞおちを蹴りつけた。
「へぼぉう!」
猿山は、そのままダウンした。
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