再びの始まり

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「ん? どしたの前園くん。なんか元気ないじゃん」 理恵にそう言われ、竜也はどきりとするのだった。 猿山に倒された、柊を助けた後のことである。理恵に倒された猿山は、 「はぁはぁ、もっと、もっと強く蹴って下さい。はぁはぁ」 と、半分意識を失いながらそんなことを口にしていたので、本当に気持ち悪く、一線を越え始めていたので、皆放っておくことにした。 「そ、そうかなぁ?」 と竜也があからさまにぎこちなく応えた。 理恵に言われたことが、当たっているか当たってないか、といえば、それは当たっているのであって、つまり竜也が抱えているあの悩みのせいであった。 鬼人は、まず適合者を狙う。 力を持たず、精神エネルギー、存在の量が多い、鬼人にとっては絶好の獲物だということは、皆もご存知の通りだろう。 竜也は、この事から推測するに、というかギヤマンが教えてくれたのだが、存在の絶対量が大きい所に鬼人は集まる、ということ――。 ようは、鬼人は、鎮魂者の前にも頻繁に出現するということである。 元々、鬼人には空腹の他に、攻撃的な本能が宿ってしまっている。 戦いを求め、わざと鎮魂者の前に現れるということは、少なくなかった。 だから、竜也は思うのだ。 自分達が鶴伽市にとどまるというその行為は、逆に鬼人を呼び寄せているのではなかろうか、と。 幸いあのことで鬼人に喰われた者は誰もいなかったが、時雨に言わせれば、危険な状況であったことを、竜也は後から聞かされた。 鬼人が喰らった存在は、いつまでもその鬼人に残り続けるわけではないらしい。 ある程度の“消化”期間があって、それを越えたらアウトなんだそうだ。 消化期間は、約一ヶ月。 鶴伽市の存在の状況が乱れ始めた時期を考慮すれば、まさにそれはぎりぎりであったのであった。 時雨からそれを聞かされたとき、竜也は青ざめてしまったことを今でも覚えていた。 そして、まぁこれは竜也も感付いていたのだが、適合者以上の者に、その法則は適用されないということ。 存在の消滅を消滅したと受け止めることが出来る者達は、一度喰われたら、御仕舞なのだ。 別にそれは、自分だけが消えるのであれば問題ない、と考えているのだが、竜也は、自分のせいで皆が消えてしまったら、自分は一体どうなってしまうのか予想もしたくないのであった。 やっぱり、鶴伽市を出ていくしかないのかな? 「…………」
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