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体育の授業が終わり、そこは夕暮れ――。
に包まれた教室の中。
こんな時間には、皆部活に出払い、教室にはいないだろう、と思いきや。
二人の女の子が、身を寄せ合うようにして一つの机を囲んでいた。
寄せ合うように、とは、別に二人が危ない関係で、誰もいないことをチャンスに、女の子の禁断の何ちゃらを確かめ合っている――ということでは断じてない。
聞かれたくない話をしているから、身を寄せ合っているのである。
二人の女の子。
篠原智美、宮里理恵、彼女達のことだった。
「理恵ちゃん……。私やっぱり駄目かもしれないよぉ」
「はい? 話したいことがあるって聞いたけど、一体全体何のこと?」
理恵は、頭にはてなマークを浮かびあがらせていた。
カチ、カチ、カチ、と、やたら壁の時計の秒針の音が響いて、そして、カチ、と進んでいくたびに智美の頬が朱に染まっていくのが分かった。
「あー、はいはい。ま……」
「わぁ――――――ッッ! 理恵ちゃん声デカイよ!!」
智美の方が、十分にデカイのであるのだが。
きょろきょろと教室の外を見回して、誰もいないことを確認すると、智美はふぅ、と落ち着いた。
「ふぅん、でまた、どうしちゃったのよ?」
「うん、あのね……」
智美はそこから、自分の盛大なる勘違いを、つらつらと述べていくのであった。
そして智美が「やっぱり私じゃ敵わないのかなぁ……」と弱気な発言したところで、理恵がバーンッ、と机に両手を叩きつけた。
「智美! 何言ってんの? いい? こういうことは後手に回ったら負けなんだよ?」
「あ……、ぅ……」
「しゃきっとする! 確かに時雨は強敵かもしれないけど、智美ならいけるって!」
その容貌を持ちながら、自分に自信の持てない女の子。智美。智美はおどおどしながら、顔を困らせるしかなかった。
けれど、次の理恵の一言で、智美の表情が変化する。
「素直に自分の気持ちをぶつけることも、大切だよッ!?」
「あ……」
正に、それは智美が竜也に言った言葉であった。
「自分の、気持ち……」
智美の顔が、きっとする。
「理恵ちゃん!」
「およ?」
「その、まだ頑張ってみてもいいですか!?」
うんうんうん、と理恵は頷く。
「よぉし、そうと決まれば、明日からのアレは外せないじゃない! 智美、早速作戦会議をしなきゃ!」
「うん!」
どうやら、波瀾万丈な合宿会になりそうだ。
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