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「あ、すまない――」
と、青年は言い。
同僚の声が、それを遮った。
『違う。おい、アレ……』
同僚の声の変化に、青年は直ぐに感ずく。
ふっと瞳の力を弱めて、写真から外れて、青年は正面を見据えた。
曇の切れ間に見える、遠くの水平線。そして、黒胡麻のような小さな粒が、その辺りにぽつぽつと浮かんでいた。
ああ、ついに来たか、と青年は思った。
「…………」
『切るぞ』
重たい、同僚の声。
青年は、力無く「ああ」と言った。
通信が、遮断された。
繋がりが、なくなったような、そんな気持ち。
今更悔いても、もうどうしようもないこと。青年と同僚は、互いに受け止める道を選んだのだった。
それでも、この最後の会話が、青年にとってどれだけ救いになっただろう?
そんな解答の見付からない問いをのせて、四機の鳥達は、揃えたように低空飛行へと移る。
先に見える黒粒のレーダーに、自分達の存在を悟らせないためであった。
と、同時に護衛の二機が後退した。
二機の任務は、護衛と、できるかぎり戦果を見届け、それを報告することである。
お国のため、陛下のためとはいえど、護衛の二人のパイロットも、若干の恐れはあったのかもしれない。
どうだとしても、二機の後退はそんなところであった。
青い海面すれすれを、四機、遅れて二機が、滑るように走ってゆく。
黒粒は次第に大きくなり、それはどれもが、自分達よりも、鳥達よりも、遥かに大きいことが分かった。
黒粒とは、複数の主砲と、何門もの副砲を構え、圧倒的な防御力を誇る、戦艦という名の戦争兵器であった。
他にも、航空母艦やら、巡洋艦やらが見える。
つまり、艦隊である。
それに突っ込めとの、命であるのだ。
鳥達は、もうただの黒粒ではなく艦隊と視認出来るほどに接近している。
さすがにあちらにも、動きがあった。
航空母艦から、敵の鳥が何機も発艦するのが見えた。
きりきりと、戦艦の砲門がこちらを向くのが見えた。
青年の手に、力がこもる。
まず、敵の鳥達との遭遇に、数分の時間すら残されていないだろう。
それは、その通りだった。
敵の鳥達は、あっという間に自分達に接近した。
星条旗がペイントされた敵機。バララッ、バララッ、と、どちらが放った銃弾なのか、空中での銃撃戦が始まった。
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