開幕前の、物語。

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煌めく閃光。 断続的な銃声。 今まで統率のとれた動きをしていた鳥達が、一気に散開した。青年は、銃弾を避けることに必死で、一体敵機は何機であるのか分からなかった。 性能は、あちらの方が上。 自分達の鳥が、戦場で恐れられたのは、もはや過去のことであった。 悲壮なる四機は、避けることに集中すればよかった。 敵機を撃墜したところで、自分達の運命に、変わりはないのであるから。 後続の護衛機に任せ、四機は戦艦を目指すのだ。 バララッ、バララッ。 敵機の攻撃に、応戦していた二機の護衛機。 一機が後ろにつかれた敵機に羽を削がれ、墜ちていった。 「――――ッ」 ここは、戦場。 しかし悔しく、青年はその光景に小さく唸る。 片割れが撃ち落とされたとなれば、護衛よりも、報告の方に重きがあると、残った一機の護衛機が翻って、撤退していった。敵機の嘴は、悲壮なる四機に向けられた。 バララッ、バララッ。 対応に遅れた一機の鳥を、銃弾が貫いた。 盛大な爆発。積まれた爆弾が爆発をしたのだ。 つまり、残り三機。 バララッ、バララッ。 青年は銃弾を避けた。 そして、自分はどうしてこんなに必死になって、避けているのだろう、と思った。 青年を含む三機は、よく頑張っていた。 かわすことは出来ない、とした角度から放たれた銃弾を、青年達は避けていた。 そうして次第に、艦隊に近付いていく。 故に、艦隊からの、対空砲火が始まった。 空気を揺るがす、地鳴りのような爆音。 戦艦の砲門の一つが光ったかと思うと、次の瞬間、着弾していた。 当たったのは、あの同僚の機体であった。 「あ……ッ」 あまりに呆気なく、同僚の機体が砕け散る。 同僚は、死んだ。 だが、敵機は悲しむ暇すら与えてくれない。 目前の対空砲火に気をとられた鳥を、閃光が襲う。 襲われたのは、生き残った二機の、青年の機体ではないほう。しかし、数秒後にはその鳥の胴体に風穴が空いており、生き残った二機ではなく、青年だけが一人取り残された。 激しい、敵機からの攻撃。 戦艦からは、対空砲火。 全てが、青年をのせた鳥を狙っている。 捻り。 かわし。 左に旋回。 海面すれすれを飛ぶ。 タイミングをずらし、失速。 また加速。 青年の機体に、銃弾は当たらない。 青年自身も、何だか狐に包まれたような、操縦をしていた。 戦艦が、間近に迫る。 鳥は、大きく飛翔した。
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