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「みゃぁーぉ……みゃぁーぉ……」
星が楽しそうに笑っている空の下で、悲しげに満月に向かって泣き叫ぶ、のら猫が一匹。
楠以外に何もない、ただ芝生が広がっているだけの丘の上にちょこんと座っている。
「みゃぁーぉ……みゃぁーぉ……」
どれだけ耳を澄ましてもその猫以外の声は聞こえてこない。
一匹狼ならぬ、一匹のら猫になってしまったのだろうか。
一匹でも、猫は生きていけるだろうが、この猫は、幼すぎるだろう。自分で食事を取ってこれるようには思えないほどだ。それに、この周辺には人気を感じられないから、餌を貰うことも滅多にないだろう。
それなのに、こののら猫
がここに居るのは、なぜだろうか。
この丘まで、どうやって歩んできたのだろうか。
こののら猫への疑問は尽きない。
だが、そんな疑問に答えることなく、一生懸命に鳴き続けている。
親を呼ぶ、赤子のように。
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