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学校や家での話し、畑の話し、いとこの話し……。おばあと雅人は、暇がないほど話しで盛り上がり、ルンルン気分で車に乗っていた。
「あ!!蜜柑山」
やっと蜜柑山が見えた。2年ぶりの再会である。どこか雰囲気が違う気がするが、2年もあれば、少しは変わることもあるだろう、と気に止めなかった。
そして、胸を弾ませたまま、蜜柑山に着いた。
窓から見える風景は、風景画ではない。車のドアを開ければ、もう、蜜柑山である。
自分の身体が、嬉しさと喜びで満ち溢れているのがわかる。
汗ばんだ手で一気にドアを押し開けた。
「おいしい」
蜜柑の香りで満ちた空気が雅人の中へと流れ込んでくる。一個、いや一房さえも食べていない蜜柑でお腹が満たされていく。そして、期待以上の結果に、心は、喜びで満たされていた。
そんな雅人を横目に
「ばあは、あっこの畑の様子を見てくるから、まぁさは、いつもんとこ行っといで」
と言った。
「うん」
これも、即答だった。
ニカッとして、文句を付けようがないほどの満面の笑みで。
おばあを畑まで見送ってから、雅人は、自分の目的地へと向かった。
毎回発見をさせてくれる、芝生の広場へと。
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