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すると、そこには、記憶の通りの緑一面の絨毯が広がっていた。
「久しぶり」
「いらっしゃい」というかのように、芝生が風でゆっくりと揺れる。
そんな、よく伸びた芝生の上を鼻歌を歌いながら駆け回る。
「ふっふ~ん♪」
そして、大きな円を描きながら、緑の絨毯の真ん中にある、楠の元へと向かった。
楠に軽く刻んだ、あの言葉がまだあるのか?!
それを確かめたかったからだ。
気分よくスキップで走り、楠まであと10メートル程になった時だった。
「みゃ……ぉ…みゃ…」
かすれた弱々しい声が微かに聞こえてくる。
「み…ゃ……ぉ………」
楠の方から聞こえる。何があるのだろうか。
何か背中に悪寒が走るのを感じ、雅人は足を早めた。
声のもとには、確かに近づいているはずなのに、その声は、段々と小さくなっていく。
猛スピードで雅人が走りだす。すぐ楠に着いたが、声が小さくて場所が特定出来ない。
必死に辺りの芝生を掻き分けると、小さなのら猫が消え入りそうな声で微かに鳴いていた。
そっと雅人が近寄ったが、全く雅人の存在に気付いてないようだった。
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