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夏の日差しの差し込む球場。
スタンドの応援団やチアリーダーに声援を送られながら、俺はピッチャーとしてマウンドに立っていた。
バシンッ!!
俺の投げたボールに相手のバッターは豪快に空振りし、ボールは勢い良くキャッチャーのミットに収まった。
「ストライク!バッターアウト!ゲームセット!」
主審の大声が球場に響き渡り、俺達笹上高校(ササガミコウコウ)野球部の県大会決勝進出が決まった。
試合結果は5‐0。
俺が9回を無失点に抑えた。
まぁ、俺に言わせれば当然の結果だ。
「決勝だぜ決勝!甲子園目前だぜ!」
「スゲェよ俺達!」
試合を終え、ロッカールームに戻るや否やチームメイト達が騒ぎ始めた。
「いちいち騒いでんじゃねーよ。勝てたのは俺が完封したお陰だろ?お前らはただ突っ立ってただけだ」
俺はそいつらに事実を言ってやった。
「何だと?調子に乗りやがって!」
「何で怒るんだよ?事実だろ?」
「止めろ二人共」
キャッチャーの川島が割って入り、喧嘩を仲裁した。
「今のは言い過ぎだぞ戸澤(トザワ)」
川島が俺に向かって偉そうにそう言ってきた。
「んだよ。ただの“球取り役”のお前が俺に説教か?」
俺の言葉に川島はこめかみをピクリと動かした。
だが、決して怒りを表には出さない。それが余計に腹が立つんだよ。
「とにかく、今日は早く帰って明日に備えて肩を休ませとけよ」
「言われなくてもわかってるっつーの。んじゃあ、明日も俺の周りで突っ立っといてくれたまえ諸君」
嫌みを込めた言葉を投げつけ、俺はロッカールームを後にした。
「……チッ!調子に乗りやがって戸澤の野郎!」
「だが実力は本物だ。……悔しいけどな」
川島はグローブをキツく握りしめながら、ボソリとそう呟いた。
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