第一章。現実は小説よりも奇なり

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「なんで、1分でいいからお茶でもしませんか!?」 ――言ってることがもうめちゃくちゃだ……、1分でお茶するって、自販機で紅茶を買って飲み干すくらいしかないじゃないか。 「お願いします!」 ――こうして見ていると、なんというか……、人間の愚かさを思い知るな。 「丁重にお断わりさせて頂きます」 とりあえずこのことを今日の日記につけておこう。(日記なんて最初からつけてないが)と朱紅は決めた。 野暮用を済ませ帰宅すると仄かに夕食の香りがした、食材を煮込む水っぽい匂い。階段を上がると妹達がいた。 「ただいま」 「お帰り、おに…お姉ちゃん」 妹にただいまの号令を掛けると、吃ってから返事をしてきた。 「……無理しなくてもいいんだけど?」 「無理なんてしてないよ」 ――いや、あきらかに付け足したような違和感を感じる。 「あー、もうわかったわかった。じゃあもうお風呂入るから。誰かお風呂入ってる?」 「さっき入ったばっかりだから、入ってる事は無いと思う」 「そっか、じゃあ俺は風呂に入ってくるから」 「わかった、そう言付けておくね。おに…お姉ちゃん」 また突っ返る妹をリビングに見送って、朱紅は二度目の風呂に挑戦した。 結果はやはり惨敗。随分と刺激が強すぎる。これでは一人の女性と関係を持つのも無理そうである。
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