第一章。現実は小説よりも奇なり

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体は一応洗ったが、疲労感はどっぷりと溜まっていた。 「いい加減にして」 風呂場の掃除を終えた姉に先程の挑戦を厳重注意された。 ……。 日曜のバラエティー番組も終わり自然と瞼も重くなってきた。 そろそろ就寝に就いてもよいと思い椅子からふらりと立ち上がった。 「寝るの?おやすみ」 「おやすみ」 母に軽く返事を返すと、薄暗い階段を登り布団にダイヴした。 直ぐに息苦しくなり、うつ伏せから大の字の仰向けになる。 「何でこんなことになっちまったのかな…」 朱紅は真っ黒な天井に向かって呟いた。 視界を意味なく遮る長い前髪を右に流す。これも、あの薬の一部だ。朱紅はこれを引きちぎりたくもなった。だが、やめた。 ――意味もなくやることはばかのすることに違いない、からだ。と朱紅は自分に言い聞かせた。 それに、どんな異常事態があっても眠気というのは見境なく襲撃してくる、というのを理解する内に、朱紅はは眠っていた。
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