第一章。現実は小説よりも奇なり

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「……ぅあ~」 身体中の疲れで変な唸り声が現れる。怠過ぎてテーブルに突っ伏したまま動けそうにない。だけどその様子を心配して母が話し掛けてきた。 「学校に間に合うの?朱紅。8:30でしょ、もう7:55よ」 「大丈夫大丈夫、8:15迄に出れば間に合……」 学…校…。 「っ!」 急いで支度を始めた。数学、英語、現代文、各教科の教科書を詰めていく。 鞄のほうの支度を片付けると、俺はクローゼットへ向かう。 「制服!制服はどこだ!」 クローゼットを開き一瞥、そして一つ一つを横にずらしていく。 漸く俺は見覚えのある黒い上着を引っ張って取り出した。 ……何だこれ。スカート……?このヒラヒラしたやつスカート、だよな。何で制服のスカートがここに。 そこにはブルーグレーの、チェックの入ったスカートが黒いブレザーとセットになって掛けられていた。 「お母さん。これ、何」 俺は直ぐ様階下に降りて昼食の作り置きをはじめようとしている母にスカートを前面に突き出した。 「何って、スカートに決まってるじゃない」 「うん、そんなこと百も承知だよ。問題は何でスカートが俺のクローゼットにあんの?」 「だって、女の子でしょ?丁度お姉ちゃんのがあったし、それ着て、学校へ」 母はぴっ、と指差した。 「……。」 自分では見当もつかないが、複雑な表情が浮かんだ。仕方ない、着替えて出発しよう。
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