第一章。現実は小説よりも奇なり

22/49
前へ
/198ページ
次へ
「……誰と言われても」 先程まで、朱紅は焦点が定まらなかったが、よく見ると身長140cmくらいの小さな女の子だった。おとなしそうな顔ではあるが、無表情でまとまってないポニーテールを携えている。 「……あなたは何でこんな所にいるの?」 無機質な口調でじっと覗き込まれてくると、大きな瞳に吸い込まれそうになっていく。 「何でって……、教室に入れないからだよ」 素直に、心の赴くまま答えた。 「何で?」 ずい、と質問を重ねてくる。 く、食い付いてくるな……。 「ち、遅刻したから、かな」 都合のいい理由が思い浮かばずに力ない訳が飛び出していく。 「そう……。」 聞き終えると納得したのか押し黙ってしまった。 だが、まだ視線が外れない。 「……。」 なんなんだ……? そのまま小一時間が流れていく。 「あの…、まだなんか…用があるの…?気になって仕方がないんだけど…」 「……見えてる。」 そよ風にさえ掻き消されそうな声で呟いた。 「白いの。」 「白いの…?一体何それ…。」 朱紅は疑問に感じたが、すぐに紅の彼女が立ち上がりその場を離れていった。 見てみるとなんてことはない、自分より頭一つ分も小さかった。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1880人が本棚に入れています
本棚に追加