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かと思うとぴたりと動きを止めた。まるで俺が見ているのを推測していたかのように言葉を放つ。
止まった……、どうしたんだ?
「もうすぐ来る」
紅の彼女はぽつりと言った、耳を傾けないと聞き取れないくらいの小さな声で。「何が?」
「先生、見回りに」
朱紅から目を離し、視線を遠くに向けた。振り返れば当然の如く階段があった。
刹那、全身が粟立つのを朱紅は感じた。
あっ、あれはっ、人影だ!人影が見えるっ!姿を眩まさなくてはっ!
「どこか隠れる所は?」
おろおろと朱紅が狼狽えていると。
「……ついてきて」
と、朱紅を導いた。紅の彼女に促されるまま屋上入り口脇の梯子を駈け昇っていく。
昇り切ったと同時に扉が開いた。
「……」
厳いとは云わなくともがっしりとした体格の男性教諭が出現した。
「最近の生徒はこそこそとタバコ吸ってやがるからな…、おーいいたら出てこーい」
出てくるわけないだろ。
と、朱紅は心の中で突っ込んだ。
「むう…ここか?いないな。ここか?やはりいないな…。」
屋上のあちこちを捜し回る。
「ここが怪しいな。いるんだろ!」
そして遂に朱紅のいる屋根上に近づいてきた。
朱紅は音が大きくなる度にじっと息を潜めた。
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