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心臓が早鐘を打つ。
今、此処で見つかれば面倒事になるのは確実。段々段々と速度が増しているのを朱紅は実感できた。
やばい、やばい、やばい!見つかるって!
「ふむ……。誰もいないようだな……。」
教員の惑うような声が聞こえてきても、ずっと押し殺していた。が、教員が諦めて離れていく瞬間、突風が朱紅達を煽いだ。
「わっ!?」
壁ぎわに隠れていた朱紅のバランスが突風に流されて崩れていく。突風によって舞い上がった髪の毛が、男性教諭の眼界でばたばたと翻った。
「誰だ!そこにいるな?」
遠くなっていた足音がまた大きくなる。
……ど、どうする。
舞った髪を捕まえて、焦ってうまくはたらかない脳を回転させた。
「……大丈夫」
すると、紅の少女がぎゅっと朱紅の裾を握っていた。
次の瞬間、名前も知らない彼女が緩やかに倒れていった。
えっ?ち、ちょっと。ぅわわわ!
引き摺られて一緒に落ちていく。朱紅が男のままだったら支えられたかもしれないが、今の朱紅にはどうすることもできなかった。
鈍い音と共に、全身をコンクリートに打ち付けた。
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