第一章。現実は小説よりも奇なり

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心臓が早鐘を打つ。 今、此処で見つかれば面倒事になるのは確実。段々段々と速度が増しているのを朱紅は実感できた。 やばい、やばい、やばい!見つかるって! 「ふむ……。誰もいないようだな……。」 教員の惑うような声が聞こえてきても、ずっと押し殺していた。が、教員が諦めて離れていく瞬間、突風が朱紅達を煽いだ。 「わっ!?」 壁ぎわに隠れていた朱紅のバランスが突風に流されて崩れていく。突風によって舞い上がった髪の毛が、男性教諭の眼界でばたばたと翻った。 「誰だ!そこにいるな?」 遠くなっていた足音がまた大きくなる。 ……ど、どうする。 舞った髪を捕まえて、焦ってうまくはたらかない脳を回転させた。 「……大丈夫」 すると、紅の少女がぎゅっと朱紅の裾を握っていた。 次の瞬間、名前も知らない彼女が緩やかに倒れていった。 えっ?ち、ちょっと。ぅわわわ! 引き摺られて一緒に落ちていく。朱紅が男のままだったら支えられたかもしれないが、今の朱紅にはどうすることもできなかった。 鈍い音と共に、全身をコンクリートに打ち付けた。
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