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「悠くん、さっきの電車乗らなくて良かった?」
「うん。この後べつに用事ないし」
美和が気を遣って聞いてくれたので、好意に笑顔で答えた。
一応、次は何分に電車が来るかと立て看板風の時刻表に目をやった。
どくん
僕は息をのんだ。
時刻表の後ろから、とりわけ気になる人影が現れた。
美和と同じ制服を着た女の子―
人の群れをかき分けるように駆け足でやってくる。
僕が思うより速い。
直感的に
こっちへ来る
と感じた。
僕の目を惹きつけた彼女の雰囲気には、肌に覚えがあったからだ。
その曖昧な印象は、
即座に彼女の名前を呼び起こす。
「藤堂 …」
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