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その後何事もなく家の前までついた頃、小粒の雨が斑に降り始めた。
「あ~ぁ、やっぱり降ってきたよ」
ぼやきながら鍵を開ける。
「ただいま~」
そういってみたものの返事が無いことは分かっていた。
僕は一人っ子だから兄弟はいない。
お母さんは一週間ほど前から入院している。原因はまだ分からないらしい。
お父さんはそんなお母さんをほっといて仕事場で寝泊まりしている。
お母さん分の給料や病院代のために一生懸命働いてくれているのは知っている。
でもこんなときだからこそ一緒にいて欲しかったのに…
そんなことを考えながら、僕は玄関に座り込んでいた。
何も聞こえない家
返ってこない挨拶
帰ってこない両親
だんだん大きくなっている雨音のせいか、不意に寂しさが込み上げてきた。
僕は靴を脱ぎ捨て、雨音から逃げるように寝室に入り、頭から布団を被って現実から逃げる為に瞼を閉じた。
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