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「あっ…」
公園を過ぎた電柱の影に物音の犯人がいた。
それは小さな子猫だった。ありがちなダンボール箱の中に縮こまっている。
「にゃぁ」
一声鳴いた子猫は不意に顔を上げ、つい見つめてしまっていた僕と目が合った。
「…えっ?」
その瞬間、僕は自分を疑った。目を擦り、頭を振り、もう一度子猫の目を見た。
何度も見た。
しまいにはしゃがみこみ、鼻先が触れる距離まで近づいた。
そこまでしても結果は同じだったがやはり信じられなかった。
こんな小さなうちに捨てられて、冷たい雨に打たれていると言うのに…
どうしてこの子猫は、こんなにも『喜んでいる』のだろうか?
どうして『寂しさ』や『悲しさ』が読めないのだろうか?
そんな真っ直ぐな感情を一蹴する事は僕には出来なかった。
「にゃあ」
その子猫がもう一度鳴く頃には僕の手持ちは3つになっていた。
少し重くなった腕で僕は家路を急いだ。
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