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朝はいつも 携帯のアラームで目を覚ます。
それが私、戸鞠 由衣(とまり ゆい) の1日の始まりである。
今日もまた お気に入りの着うたがアラームとして鳴り響いた。
ベッドの上、羽毛布団の暖かい温もりに顔を外に出せない1月の真冬。
いつも大好きな着うたも、この時ばかりは不協和音に思えてしまうのが情けない。
「……うっ…さい…なぁ…」
寝起きの掠れた声には、アラームに対する怒りが滲み出ていた。
布団の中で丸まっていた体を ぐっ と伸ばし、枕元に置いてある携帯電話のボタンを適当に押してアラームを止めた。
その時点で意識は完全に1日の始まりを自覚している。二度寝は極度に疲れていない限りしない。すぐにベッドから体を起こし、部屋のカーテンを開ける。
朝日が差し込む由衣の部屋の壁には学生服が掛けられている。ハンガーに掛けられた紺色のブレザー チェックのスカート。
由衣は、県立妃櫻(ひざくら)高等学校2年 その三学期真っ只中を生きている17歳である。
パジャマ姿の由衣は、ベッドから降りるとすぐに部屋を出て 隣の部屋のドアを数回叩いた。
「朝だよ。起きなー」
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