15人が本棚に入れています
本棚に追加
笑うねこ
私はいつも見ていた。
彼はいつも泣いていて、手をグショグショに濡らして、俯いて。
服はボロボロ、泥だらけ、膝には擦り傷があるし、靴が片方無い。
私は彼に何でいつもそんな格好なの? と聞いている。
だけど彼は泣いたまま、何も喋らない。
いつかは、と毎日同じ事を聞いている。
だけど彼は答えてくれない。
今日もまた彼は泣いていた。
でもいつもと格好が違う。
顔に絆創膏が貼ってあるけども、他は全部黒かった。
今日も私は彼に聞く。
『いつもと違うねぇ、今日は何かあったのかい?』
彼はこっちを見た。
泣いている顔が歪んでいた。
彼は口を動かして言った。
『…………………………』
大きな声で何かを言っていた。
良く聞こえたけど、意味が分からなかった。
でも私は驚いていた。
意味は分からないけど、驚いていた。
そして、笑っていた。
何で笑っていたかは、私にも分からない。
可笑しかったから……違う。
嬉しかったから……違う。
楽しかったから……違う。
本当は、泣いていたから。
私はどんな顔をしていたか、実は分かっていない。
本当に笑っていたのだろうか?
彼はあの時笑っていたけど。
泣いていた顔から笑っていた顔に。
私はどうなんだろう?
私は、にゃあ、とないてみる。
最初のコメントを投稿しよう!