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眠るねこ
暖かい陽気が縁側を照らす。
今は夏なのだが、今日は少し涼しい天気の様だ。
僕は今、田舎のお祖母ちゃん家にいる。
毎日蒸し風呂の様なオフィスから解放され、今や伸びも惜しみない。
「あぁ、有休はいいなぁ」
ついつい欠伸を洩らしてしまう居心地の良さ。山はいいもんだ。
お祖母ちゃん家には猫が一匹住み着いている。ぶち猫みたいだが、色合いが牛に見える。
お祖母ちゃんの話によると、もう十年も住み着いているそうだ。何ともまあ、長生きなこと。
……そういや、お祖母ちゃん家に最後に来たのは十年前だったかな。多分、僕らが帰った後から住み着いたのか。
その猫は隣で丸くなって寝ている。
気持ち良さそうに寝息をたて、全く警戒心を持っていない雰囲気が漂っている。時々髭がピクリと動いたりもする。
風がそよそよ流れ、風鈴は涼しげに鳴る。
雲はゆっくりと流れていく。
更に涼しくなってきたようで、隣の猫は目を覚ました。
大きな欠伸をし、背伸びをすると、どこかに歩いていった。僕は彼についていくことにする。
広々とした田畑を両手に猫は真っすぐ歩いていく。
一体どこに向かっているのだろうか?
田畑の道は途絶え、住居区に入っていく。
昔とほとんど変わらない街並み、懐かしい看板やポスターが今でも綺麗に残っている。
まるで、昔にタイムスリップした気分だ……っと。
猫は狭い路地に入っていく。
大人一人ギリギリ通れる狭さだ。痩せ型で助かった……。
路地を抜けると、広い公園に出た。
遊具も何もないただの空き地に見えるが、水のみ場等がある。公園だ。
はて、あの猫はどこに行ったのか。
僕は公園中を見回す。
タンクトップと短パンの少年やワンピースの少女がちらほらと見えた。
みんな、ベーゴマやメンコ、ままごと、かくれんぼにラジコン、あぁ懐かしい……僕もよく遊んだっけなぁ……。
ふと気付くと、猫は公園の入り口に座っていた。
まるで僕を待っていたかのように。
僕は彼に近付くと、彼は歩き出した。
公園の向こうは一変して都会となっていた。
猫は道路を渡ろうとした。だが、横からトラックが……っ!?
「危ないッ!!」
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