捨てられたねこ

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 黒い何かは美味しそうな匂いのするものを差し出してきた。    私は恐る恐る足を前に踏み出し、その正体を調べてみる。    丸くて……赤い? 果物の様だ。    暗くて良く見えないが、確かに果物の様な物だ。        そうしている私はつい、その果物を噛んでしまった。――甘くて美味しい林檎の味がした。    黒い何かは私の目の前にそれを置き、そのまま動かなくなった。    でも、気にしなかった。    私は目の前の林檎を、芯すら食べてしまう勢いで食べていたからである。    あぁ、なんて美味しさなんだろう……。    空腹の所為でもある。いや、空腹のおかげでもある。        それを食べ終わると、私は黒い何かを見た。    安堵か、私は黒い何かの正体が薄らと見えてきた。    ほぼ逆光だったが、人だと分かった。    黒い髪に大きな黒い瞳、頭にリボンを着けていて、服装はワンピースの様な服の女の子。    笑った顔で私を見ている、少し幼い少女。   「――――ッァ――――」    何を言っているのか、良く理解出来なかったが、私は嬉しそうに鳴き声をあげてみる。    少女は更にニッコリと笑った。
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