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目が覚めた時には傘が無くなっていた。
身体が濡れていないところを見ると、雨が止んだ時に無くなった様だ。
今はまだ、灰色の空だった。
午後からまた雨が降りだした。
どしゃ降りの中、私は毛布の中で包まっていた。
寒さは凌げないが、雨粒の痛さは凌げた。
……今日で私の命も終わりだろう。
寒いが、案外楽に死ねそうだ。
私はまた眠りに就いた。
……どのくらい寝てしまったのだろうか?
私は乾いた温かい毛布に包まって寝ていた。
ぼやけた視界を見回すと、ストーブが一台、中で火がこうこうと燃えていた。
私はゆっくりと身体を動かす。
毛布から出ても暖かかった。
「あ、起きた」
上から声が聞こえた。
私は顔を上に上げ、声のした方へと身体を向ける。
声の主はあの少女だった。
「温かいミルク持ってきたよ」
彼女の手には、陶器の真っ白い平皿があり、それを私の目の前に置いてくれた。
「大丈夫だよ、猫さんに合わせた温度にしてあるから」
私は皿のミルクに顔を近付け、ミルクを舐めてみる。
温くもないし、熱くもない。
私にとって、丁度いい温度だった。
少女は微笑んだ声を洩らした。
私は、ありがとう、と言った。
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