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こんなとこで呑気に食事してる場合じゃないよな、早く家に戻って【あれ】の続きをやらないt……
「シ・ン・ヤ」
「……ひゃわ!?」
背後から耳元にかけて強襲!?いや、甘い吐息がぁ!
「‐―ひゃに!?」
追い討ちで首もとから首筋に掛けてツツッと撫でられた感触に、彼は思考停止し再び変な声(悲鳴)を上げてしまう。椅子から転げ落ちそうになったのはご愛嬌。というか落ちた。
「アハハハ。ホント弱いよな首筋ぃ‐―」
快活な笑い声……この声の正体は知っている。だからこそ真也は怒った。
「―‐あー、やっといて言うのもアレだけど……大丈夫か。」
「だ、大丈夫じゃないですよ千草さん!毎度の事ですが、首筋は弱いんでホントヤメて下さい。」
精一杯の虚勢を込めて、真也が本気で怒って振り返ると、それをどことなく見破ったような雰囲気を漂わせる女性が、くわえ煙草をしながら、何かどす黒いモノが入った皿を片手に持ち立っていた。
端正な顔立ちとすらっとした体型。痩せていると言うより鍛えられた体躯がキュッと引き締まったような女性である。その女性がふっと笑って、真也をさらにからかう。
「解った解った♪今度は気をつけるよ♪」
この人絶対やる気だーー!
未だにニヤニヤと笑うこの美人の名前は、緑川 千草(ミドリカワ チグサ)。このお店の店長兼社長である。ちなみに歳はトップシークレット、干支は羊で俺は猿だから俺より年上と考えれば必然的に……。
「あいだだだだだっ!?ギブ!ギブ!」
「お前今年齢のこと考えてただろう。あん?」
「してませんしてません!だだだだだた!?」
よい子のみんなは計算するなよ!マジで死ぬから……。
チョークスリーパーを喰らいながら必死でギブアップ。大人の世界って、怖いなぁ。
「はぁ、死ぬかと思った。というか‐―」
ようやく解放され、彼は未だに半分以上残ったオムライスに口に含みながら訊く。行儀悪いのは解ってる。ただ急いでるんだ……見逃してくれ。
「コレから休憩ですか千草さん。」
「いや、サボり~。」
「何やってんすかぁ!そんなことしてっとまた怒られますよ!」
脳天気にこの人は今即答でサボりと言いやがったぞ。
「まぁ実際はサボりじゃなくて秘密の特訓♪」
てへっと舌を出して子供のように無邪気に笑う千草は、予想以上に可愛かった。
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