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「どーした真也、顔が赤いぞー。熱か?」
「はは、暖房効き過ぎじゃないですかね‐―」
軽く苦笑いでごまかす。この人のからかいにつき合っていたら身体がいくつあっても足りないのだ。と、そこで彼は千草が手に持つ皿の中身に視野を当てて、話題を逸らしてみる。
「あ、えーと。ずっと気になってたんですけど、それは前に言ってた新作……ですか。」
「ん、あぁコレ…ね。」
どうにも歯切れの悪い千草の返答に、何故か身震いを感じる。自分はこのようなやり取りを過去にした記憶がある。話題を振っといてあれだが、あのどす黒い中身は一体……。
「確かに新作何だが……その、少し失敗してな、一応チャーハンなんだけど。」
「チャーハン……ですか。」
おずおずと差し出された皿の中身はどう見ても炭化している物体である。丁寧に一粒一粒カーボンされている兵器である。少し失敗とはどういう失敗だろうか、いや一目瞭然何だけど……。
「一応チャーハン。」
「そう……ですか……。」
冷や汗が全身から溢れ出した。
‐逃げろ……。
男としてコレは食べなければならない状況なんだろう……
‐逃げろ!
しかしコレは……
食べるべきか、食べないべきか……。
「やっぱりダメ……かな?」
「いいえ、イタダキマス。」
‐愚か者めが……。
子犬が泣いたような表情でシュンと下から見上げられたら、誰だってNOとは言えまい。
「ホント?」
千草の表情が涙目からスゴい嬉しそうな笑顔に取って代わる。コレは生半可な答えを返したら泣いちゃうんだろうなぁ……と、俺は後悔しながら覚悟を決めた。
空の上から俺を見守っている母さん、今日俺、母さんに会えるかも知れないよ。(まだ母さん生きてるけど)星なんて見えないレストランの天井を見上げた俺は覚悟を決めて生唾を飲み込んだ。その時……。
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