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「あの……今晩和」
なんとなく離れるのも気まずくて、とりあえずひとつ空けた隣に座ってみる。彼女はふてくされた顔で目線をそらした。
……えーっと。
社交辞令でも、「何かあったんですか?」って聞くべきなんだろうか。いや、ここは関わらないのが正解なのかもしれない。
それが正解だとしたら、俺は早速踏み外してしまった、と思う。席が近いのを筆頭に。
マスターの方に目を向けると、困り果てたように微笑っていた。
「……あなた、ここの常連さん?」
「え?あ、はい、まぁ」
「そう……」
彼女はまた目線を俺から外した。
「あのー……」
「何かあったんですか?」
「そう、そうなの! ちょっと聞いてよ、本当酷いんだから!」
成程、聞いてもらいたかったのか……。
だとしたら、やっぱりこの選択は間違っていない。
俺が話を聞くことで彼女が楽になれるなら。
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