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『決まったぁぁ!!優勝は初参加の、アキラ・クレナイ選手!!』
会場は割れんばかりの大歓声が会場内に響き渡った。そんなことも関係無いかの様にアキラはシミュレータの中から出てきた。
「おーい、アキラー!!」
今まで観客席で応援をしていたコウがアキラに駆け寄ってきた。
「お前、凄いな!!まさか優勝するなんてさ!!」
コウはアキラが優勝したことを自分のことの様に興奮していた。対照的にアキラの方は特に嬉しいといった表情もしていなく、平然を保っていた。
「まぁ、まぐれだろう。たまたま考えた作戦が何とか通用した。ただそれだけのことだろう」
「でも、流石トウヤさんの息子のことだけあるよな」
コウがその『トウヤ』という人物の名前を挙げた途端、平然を保っていたアキラの表情は怒りに染まった。
「あっ、悪い…お前には禁句だったな…」
「……コウ…その名前だけは口にしないでくれ…」
「まだ…嫌ってるのか…?親父さんのこと…」
「許せるはずがない…オレや…母さんのことを放っておいて軍にいる奴のことなんて…」
アキラの父親…トウヤ・クレナイは軍人なのである。ARの乗り手であり『閃光』という二つ名を持っていたエースでもあった。今はその功績が認められて中佐に昇格している。
アキラはそんな父親を嫌っていた。家族のことを無視して軍で働いている父親を…
『アキラ選手、おめでとうございます』
暗い面持ちのアキラとコウの元に司会者が現れた。アキラは気を切り替えて対応した。
『まもなく表彰式を行うのでこちらに来てもらえませんか?』
「はい、わかりました」
『では、案内しますので着いてきてください』
司会者のあとに着いて行こうとアキラが一歩踏み出した…その時だった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
突如、会場全体が大きく揺れ始めた。突然のことに会場にいた全ての者が身動き一つとれなかった。
そして揺れが収まると辺りから恐怖の悲鳴が飛び交い、会場内は混乱に陥った。
「な、何だったんだ!?今のは!?地震か!?」
「…いや、違う…」
アキラはそう言うとすぐさま出口に向かって走っていった。コウもよくはわからなかったがアキラに着いていくことにした。
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