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「レイちゃん、またこんな狭い所に居たんだね。
はい、今日のご飯ね」
いつものように突然目の前に現れた少女は、ぼくに挨拶をする隙も与えずに目の前にぼく専用の食器を置いた。
「レイちゃんは雨が降ったりした時はどうしてるの?
ここじゃあ不衛生だし、冬になったら寒いでしょ?」
ぼくは与えられたご飯を無心で食べる。
お母さんを最後に見たのがこの場所だったのだ。だから只何となくここに居たい。
でも、そんなことはぼくをレイちゃんと呼び、毎日ご飯をくれるこの人には知って欲しいとは思わなかったし、
当然猫のぼくが人間の言葉を話せる訳でもなかった。
だから聞こえていない振りをした。
それが唯一ぼくと接点のある人間との日常だった――。
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