猫撫で声

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「さすがに毎年行くと飽きるわね。去年よりはまるで住んでるみたいに物が揃ってたけど」 可奈子は愚痴っている。 「そうなんだ? 社長は友達いないから私達を誘うのよ。でも独りには慣れてるでしょうし」 星野社長はあまり友達がいない。 それだけデザインに打ち込んで来たのだろう。 そして手に入れた高田林の別荘で一人過ごすのを気に入っていた。 要するに天才によく見られる変わり者だった。 天才という程まで売れっ子ではないけれども。 「でも寂しがり屋だからエルメスを飼ってるんだよ」 エルメス──。 それは星野社長が飼っている猫の名前。 胸がドキリと鳴った。
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