プロローグ

2/4
前へ
/53ページ
次へ
予定時間より遅れていた。 時間は夜の10時を回っている。 金子(かねこ)いずみは街灯の間隔が広くて暗い道を、ハイビームのままアクセルを踏み込んで、軽自動車のスピードを上げた。 濡れた路面だったが、タイヤはしっかり食いついていた。 いずみが走る高田林は、S県にある山の中腹にあたる。 陸の孤島でもあり、ちょっとした別荘地である。 最近、問題になっている都会のヒートアイランド現象から逃れるには、格好の位置にある。 しかし、冬は急な坂道が凍り、年中を住居にする人は少ない。 本当の避暑地に別荘を持てない小金持ち達が、中途半端な見栄で買う別荘地なのだ。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

689人が本棚に入れています
本棚に追加