プロローグ

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仕事仲間であり、友人でもある可奈子からだ。 携帯に気を取られたいずみは前が見えていなかった。 飛び込んだ黒い影に気付くよりも先に、いずみは車に衝撃を感じていた。 反射的にブレーキを思い切り踏み込む。 衝撃の軽さから、犬や猫だと思いたかった。 タイヤが悲鳴を上げながら車はしばらく前に進む。 肉を引きずった感覚がハンドルから伝わる。 車が止まってからも、いずみはしばらく動けなかった。 肉体的に呼吸するのが辛かったのもある。 それより精神がやられていた。 やってしまった──。 よりによって急いでいる時に──。 犬か猫であって欲しい。 いずみは切実に願った。
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