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店の奥から七原さんが出てきた。
「書けましたか?」
「あ、はい。書けました」
七原さんはさっきと同じ場所に座ると、用紙に目を通しはじめた。
小さく頷きながら書類を眺める姿は、一流企業のやり手サラリーマンのようだ。
私は、書き間違いがあるんじゃないかと急に不安になってしまった。
「うん。大丈夫だね。字がうまいんだねぇ~」
七原さんに誉められて、自分の顔が赤くなっていくのがわかった。
「保険のコピーとらせてもらうね。
その間に着替えておいてもらっていいかな?
更衣室へは山本に案内させるから」
「はい……」
「大丈夫だよ。
最初はみんな不安なんだから!
それじゃ、よろしくね!
翔子ちゃん!」
「はい!」
七原さんの笑顔で、魔法にかけられたように元気が出てしまった。
私は、自分で思うよりもずっと現金な人間のようだ。
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