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私は興奮がおさまらなくて、街をひたすら見て回った。
テレビのCMでしか見た事のない店が並んでいて、その店のCMソングを口ずさんでみたりした。
かの有名なコーヒーショップでカプチーノを頼んでみる。
カプチーノなんて、響きがオシャレだなって思うだけで、飲んだこともなかったのに。
でもこのカプチーノのほろ苦さは、自由の味だ。
窓の外にはラルフローレンとカルバンクライン看板。
デブのブスの私だってその名前は知ってる。
その看板を見下ろしながら、カプチーノを飲んでいるなんて、自分もすっかり都会人になった気分で、顔の筋肉が緩んだまま戻らない。
ニヤニヤしながらカプチーノをすすっていると、隣りの席に高校生が座った。
紺色のスカートにツヤツヤの巻き髪。
とても楽しそうで、私が経験したことのない青春が羨ましく思えた。
私が痩せていたら……
私が美人だったら……
私に友達がいたら……
あんなふうに楽しく、学校やファッションや恋愛の話ができたのだろうか。
高校生は私よりも年上に見えて、なんだか場違いな気がしてきた。
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