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そんなことを考えながら二人を眺めていると……
「マホさんお願いしまーす」
それはボーイの山本さんの声だった。
マホさんは山本さんに小さく返事をし、田中さんのグラスに乾杯をしながら言った。
「田中さん、せっかく盛り上がってたのにごめんなさいね。
指名が入っちゃったみたい。
ちょっと失礼するわね。
すぐに戻ってくるから。
翔子ちゃん、田中さんが他の女に電話しないように見張っててね」
「は、はい!」
「マホ~
もう行っちゃうの~?
早く帰ってこいよ~?」
「すぐに戻るわね」
立ち上がって軽く会釈をし、マホさんは他のテーブルへ行ってしまった。
私が田中さんの名前を夜空の月に向かって叫んでいるうちに、他の客が二組ほど来ていたようだ。
テーブルの上のシャンパンは、まだ四分の一程度しか減っていない。
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