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転がるようにコーヒーショップを出た。
服を買うためだ。
私もこの街の人たちのようにヒラヒラと歩きたい!
握った拳で戸を叩くかのように心臓が脈打つ。
18年間閉じ込められていた、私の中のもう一人の私が外に出たがっている。
今日から私は変わるんだ。
思えば、いつどこで買ったか覚えていないような、毛玉だらけのパーカーとジーンズで、よくもこんなに遠くまで来れたもんだ。
自分で自分が恥ずかしい。
私は、生まれてこのかたオシャレなんてものには無縁だった。
買い物の仕方がさっぱりわからないのだ。
服を買いに行く服すら持っていなかったから。
私はあっちの店へこっちの店へと、何度も行き来しながら、試行錯誤を重ねた。
どんな服を買ったら良いのかと悩みながら、スニーカーが擦り切れる程に歩き廻った。
何時間も悩んだけれど結局【一番綺麗な店員さんがいる】という私らしい単純な理由でお店を選んだ。
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